最も影響力のあるブルース・ソングの多くは、今日に至るまで鳴り響き、先週あなたの町のローカル・バンドによってカヴァーされた曲もきっとあるだろう。あえて言うなら、もしロバート・ジョンソンが十字路に足を踏み入れなければ(訳注:ジョンソンの十字路“クロスロード”伝説より)、あるいはB.B.キングが今でもスリルを味わっていたら(訳注:「The Thrill Is Gone」に掛けて)、世界はもっと貧しいところだったに違いない。
■B.B.キング「The Thrill Is Gone」 プロデューサーのビル・シムジク(そう、この数年後にイーグルスと一緒に何百万と稼ぎ出すことになるあの人物)は、B.B.キングが60年代にレコーディングした数多くのスムーズ・バラードのひとつだったこの曲に、ストリング・セクションを足したことでちょっとした革命を起こした。このプロデューサーは臆することなくB.B.キングのサウンドに磨きをかけ、彼と一流スタジオ・プレイヤー達を組み合わせ、レコーディングに挑んだ。そうしてこの時、彼の非常に心のこもったヴォーカルを引き出した。「The Thrill Is Gone」はブルースとポップを融合させた初めてのレコーディングではなかったが、今日までで最もスムーズで最も成功した曲であり(ポップ・レコードとして15位を獲得)、その後に誕生する数多くのクロスオーヴァーのお膳立てをした。
■ハウリン・ウルフ「Evil」 へヴィ・メタルを発明したのはレッド・ツェッペリンかブラック・サバスか、そんな無駄な議論に時間を費やすのは止めよう。我々の知る限り、ハウリン・ウルフはこの曲を1954年にプレイしていた。そう、「Evil」は基本的にはスロー・ブルースだが、バンドの非常にがむしゃらな取り組み方が(差し迫っていて、実に快いハウリン・ウルフのヴォーカルは言うまでもなく)、曲に大きな影響を与えている。一方、この曲を作曲したウィリー・ディクソンは、裏切られ、そうして史上最高のメタフォー(“馬房で別のラバが足蹴りしているようだ”)が誕生した。ザ・ドアーズがカヴァーした「Back Door Man」やザ・ヤードバーズがカヴァーした「Smokestack Lightnin’」といった多くのハウリン・ウルフの楽曲とは異なり、「Evil」ではアイコニックなロックン・ロール・カヴァーが生まれることはなかった(カクタスは1971年に本当に素晴らしくもあまり知られていないヴァージョンをやっているが)。しかしヘヴィ・ロックのタフさと、そして言うまでもなくダーク・サイドへの関心は、この曲なくしては行き詰っていただろう。
■ロバード・ジョンソン「Crossroads」 純粋に音楽的レヴェルから言うと、この曲の持つ力は明らかだろう。ロバート・ジョンソンの激しいスライド・ギター・プレイは、デュアン・オールマンやジョニー・ウィンター、ロリー・ギャラガー、そして事実上のブルース・ロック時代の偉大なスライド・プレイヤー達が皆、繰り返し取り上げてきた。またこの曲にはブルースの奇妙なミステリーについての証言もある。ロバート・ジョンソンは本当に悪魔に魂を売っていたのか、それとも単に車をヒッチ・ハイクしようとしていたのか、どう感じようとそれはともかく、彼がどれだけ危うい状況にあったのか納得させられる。またクリームのサード・アルバム『Wheels Of Fire』で、エリック・クラプトンがエレクトリック・ギターでプレイしたヴァージョンも良く知られている。